アートの祭典 中之条ビエンナーレに学ぶ
10月16日、群馬県吾妻郡中之条町において「アートの祭典 中之条ビエンナーレ」について、担当の方々や作家さんにお会いしてお話を伺ってきました。
〇ビエンナーレって?
「ビエンナーレ」とは2年に一度という意味。
参考までに、今年開催された越後妻有アートトリエンナーレの「トリエンナーレ」は3年に一度という意味です。
〇中之条町で開催される芸術祭
豊かな自然や伝統文化をアートの力で発信するイベントとして、また文化・芸術による地域づくりのステージとして、町内全域に展示される現代アートの作品を通じて、多くの方にまちの魅力を感じていただきたい、そんな気持ちで開催されているイベントです。
昨年9月9日から10月9日まで行われた第6回は参加作家162組、来場者数延べ42万人と盛大なもの。
・地域コミュニティの活性化
準備段階から開催期間まで、地域のボランティアに支えられながら行われることで住民と住民、住民と作家、住民と来場者という交流の場ができているようです。
・地域経済への波及
作品の制作から販売まで幅広く地域に根差した経済活動になっています。
また、作品制作のために長期間滞在する作家による活動経費(町内での生活費含む)は一人あたり30万円以上と予想されます。
・移住者の増加
芸術祭に参加したことを契機に、作家やクリエイターのIターン、地元出身者のUターンが生まれています。これにより日常的な芸術文化イベントが起きていて、人が人を呼び、今後さらなるクリエイターの増加が期待されています。
〇現地で思ったこと
新潟県内でも越後妻有アートトリエンナーレや新潟市で開催される水と土の芸術祭など、芸術を地域づくりに活かした取り組みはありますが、中之条町の最大の特徴は小さな町が単体で行っているということでしょう。そのため、イベント期間外の常設作品は維持費がかかるので設けない等の工夫をしていました。
そもそも若手芸術家の育成を目的とした「吾妻美学校」という事業が町内の廃旅館で開催されたことを契機に、身の丈に合った手作りのイベントがいつしか盛大なものとなり、現在の中之条のイメージを創造するに至ったという様子が、担当の方々の話しぶりから推察されました。
今後は、移住してきたアーティスト等の協力の下、子どもたちの情操教育に寄与する文化活動を展開するとのこと。
さらにはアートシーンが海外に市場を持つことから、海外との交流事業やインバウンドの拡大へと派生していきたいという展望もうかがいました。
少子高齢化、人口減少という環境を踏まえた中で、小さな町が存続すべく活路を見出していく好例の一つではないでしょうか。